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個性について
私は私の一切の活動がただ私に於いて起こることを知っている。
眺めるところに個性の理解の道はない。私はだだ働くことによって私の何であるかを理解し得るのである。
私がすべての魂を投げ出して働くとき、私の個々の行為には私の個性の全体が現実的なものとしてつね
に表現されているのである。
怠慢と我執と傲慢ほど、私達を自己の本質の理解から遠ざけるものはない。
自己を知ることはやがて他人を知ることである。私達は私達の魂がみずから達した高さに応じて、私達
の周囲に次第に多くの個性を発見してゆく。自己に対して盲目な人の見る世界はただ一様の灰色である。
自己の魂をまたたきせざる眼をもって凝視し得た人の前には、一切のものが光と色との美しい交錯にお
いて拡(ひろ)げられる。
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『人生論ノート』 三木 清 新潮文庫